薬食同源
ついこの間まで暑さに喘いでいたのが噓だったかのように冷え込む日が続き、いよいよ2022年も残すところあとわずか、というところまでやってきました。
これから、食欲の秋を経て、年末、そして年始に向けて、ちょっと食べすぎてしまうことがあるかもしれません。私はきっと、食べ過ぎます。
「医食同源」という言葉を知っていますか?「日ごろからバランスの取れた食事を摂って病気を予防しましょう」というような意味の日本で作られた言葉です。実は、この言葉はもともと中国で古くから伝えられてきた「薬食同源」という概念を日本に伝えるために作られた言葉でした。
生薬という、天然物由来の薬を使ってきた中国において、薬と食事はもとをたどれば源は同じであり、薬と食事には同じような効果があるために間違った食事は病を引き起こす原因となり、逆に良い食事は健康を保つために欠かせないものであるという考え方があります。
薬と食事の源が同じと言われても、あまり納得できないかもしれません。例えば、「何となく調子が悪くて風邪かも?」と思ったとき、葛湯(くずゆ)や生姜(しょうが)湯(ゆ)を飲んだりしませんか?そして、いよいよ本格的に風邪をひいたと思ったら、病院に行って「葛(かっ)根(こん)湯(とう)」を処方してもらったことはありませんか?
葛根湯を構成する7つの生薬の内2つは、「カッコン」と「ショウキョウ」です。これらを漢字で書くと「葛(かっ)根(こん)」、「生姜(しょうきょう)」となります。見覚えがありませんか?それぞれ、葛(くず)の根や、生姜(しょうが)を加工することによって作られた生薬です。(食事を作るように、生のまま使うのとは少し違います。)
漢方薬に使われている生薬にはこのように身近な食材や素材を使ったものが意外とたくさんあります。興味のある方はぜひ調べてみてくださいね。
食事は自身の体調をととのえる、最も基本的で楽しくて、ついついおろそかにしてしまいがちなものです。食べることは生きること。寒くなって体調が崩れやすくなるこれからの時期、少し、「からだに良い食事」を心がけてみませんか?
けやき薬局 河西和子(薬剤師)